日本が誇る頭脳格闘ゲーム将棋---将棋のプロ棋士が人狼をやったらどうなるのか。
今でこそ多くの将棋棋士が経験者枠として人狼放送に出演するが、2013年2月18日ニコニコで放送された「将棋棋士の人狼」では全員が初心者という状態で村がはじまった。
今回はこの初戦を振り返ってみよう。
(敬称略、ネタバレを多く含みます)
将棋棋士の人狼 出演者紹介
藤田綾
女流初段、人狼率がやたら高い
山口恵梨子
女流初段、潜伏上手
瀬川晶司
五段、素直で正直な人
佐藤慎一
四段、この放送は「佐藤vsコンピュータ将棋」の宣伝を兼ねていた
貞升南
女流一級、これ以降ニコニコの人狼放送に多数出演
千葉幸生
六段、千葉市民の愛称で親しまれる
片上大輔
六段、前半ミスリードした分を速やかに訂正する思考は見事であった
安食総子
女流初段、妖精を見た経験があるらしい、センサー感度が凄まじく投票のほとんどが狼に当たる
及川拓馬
五段、初戦は早々に死んでしまうが、2戦目以降安定した活躍を見せた
村中秀史
六段、今回の主役
中田功
七段、ゲームの達人と称される、将棋では中田功XPという堅い守りを崩す必殺技を持つ、初心者とは思えない視野の広さと白アピでかえって疑われる
将棋棋士の人狼 ゲーム展開
初日朝
初心者とは思えない迅速なCO。対抗が出ないことから真置きされる。
「現状市民から見て五手詰めだと思います」人狼ゲームにおいて最重要事項の1つ、縄数について考察を出してきた中田コーヤン。
11>9>7>5>3>1と、5縄の中で人間の私を占うのは勿体無いという趣旨。事前に相当予習されたことが窺える。
瀬川(占) 占いCO
質疑・投票時間のCOいう点で信用を得られず。
初日夜
単純に手ごわそうなところを襲撃。中田は占い位置でもあり、翌日噛み先占いになりやすく、騙った村中は結果を出しやすかったと思われる。
2日朝
いわゆる対抗占いを示唆した発言である。ちなみに瀬川の占い先が村中では村陣営に利は全くない。
狂人や狐がいない上、村騙りもほぼ皆無とすると偽者の占い師同士を占ってもお互い狼と言うだけである。
仮に瀬川が「村中君を占って狼でした」と伝えても「そらそうよ」と村がなるだけである。よってグレーの千葉棋士を占ったのは決して悪手ではない。
序盤で騎士生存が濃厚な場面のためCOは悪手ではない。むしろ狂人がいないこの村では初日にCOしても問題ない。占いの内訳が必ず真狼のため確定噛みされても狼が1匹吊れる。
霊媒師を騎士にずっと護衛させ進行することで霊媒結果を残す白確が1人生き続ける形が作れる。
千葉は瀬川から人間判定を出されているため、瀬川の白を処刑する=瀬川を偽で決め打つ ことになる。瀬川を偽で決め打つのであれば瀬川処刑が先である。
占い師をまだ決め打たないのであれば、誰からも占われていない完全なグレー(完グレ)からの処刑が望ましい。
すなわち 藤田 中川 佐藤 貞升 片上 安食 の中で、各々が投票する形が理想であった。
狂人や狐がいる村であれば有効な場面は一応あるが、それでも条件は限られる。
占い騙りの狼を真と決め打った形。結果として決めうちは失敗しているが、決めうちそのものは決して悪手ではない(とはいえもう1日待っても良かった気はするが。
2日夜
3日朝
村中の対抗である瀬川が人間だったことから、貞升目線で村中が人狼と確定したと主張。現状1人も狼は吊れておらず、まだ3匹残っている情報を村に提出した。
ミスリードしている市民に白を出すことで足場を固める形をとったと思われる。
初日朝に処刑した及川を占ったという矛盾した発言から村中偽を追い始めた2人は村中へ投票する。
「最後に安食さんの声が聞けて良かったです」
「誰も聞いてくれないと思いますけど貞升さん投票で」
「みんな後悔しますよ、ええ」
村中に投票しないと翌日疑われるので狼2人は流れに乗って村中に投票した。
ようやく狼1匹の処刑に成功した村陣営。
3日夜
4日朝
貞升を真と決め打つことができれば、瀬川から白を貰っている千葉は吊り候補から外れる。よって 藤田 山口 安食の3人が処刑対象。
決め打ったとしても2連続で狼を吊らなければ村の負けが確定する厳しい局面である。
貞升偽説を考え始めた千葉。
決定打は村中(狼)の捨て台詞だそう。
棋士人狼の面白さ
諸悪・村中の誕生
この活躍以降、村中六段は諸悪の愛称で親しまれるようになる。初めての人狼でここまでの騙りセンスに脱帽である。
「女性2人に騙らせるのは悪い」という紳士的姿勢も素晴らしい。そこも含めて諸悪である。
ここから村中六段は人狼放送に多く出演し、様々な村で大きな活躍を見せている。圧倒的不利な局面から逆転することも多く、彼がいるだけで村がひきしまる。
「村中さんがいるだけで見たくなります」(by GEN)
初心者が多い村で比較的短命(序盤に噛まれる)なのは惜しいがそれだけ彼の強さが浸透しているとも言える。
将棋棋士の魅力
参加者は人狼経験がほぼ皆無だったことがむしろプラスに働いた放送だったように思う。
経験者から見ると矛盾の多いプレイは散見されたがプロの勝負師らしい駆け引きの数々はとても面白かった。個々のキャラプターや各々が自然に話す様子も好印象であった。
GENも将棋はたしなむ程度には指すのだがほぼ全員初心者の中で何故か圧倒的に警戒される中田や何故か狼をズバズバと当てていく安食など棋士の新たな魅力・潜在能力が垣間見えた勝負であった。
いろんな意味でオンリーワンな放送でした。その後の有名プレイヤーを多く輩出したとても興味深い放送です。