とある人狼アプリが人気を博している。人狼ジャッジメントーーー通称「人狼J」である。
GENのツイッターTLにも関連話題が多く流れてきたので、以前から気になっていたこともあり調べてみた。
するとこれまでの国とは異なる文化が形成されていることがわかった。具体的には
②「初日から『私を処刑してください!』と率先して吊られる人を募集する」
以上2点である。以降これらを「霊伏せ」「人柱」という表現に置き換えて論じていく。
内容的にはいつも以上に基礎的事項が多い為、経験者には既出知識が多い記事になってしまう点をご容赦いただきたい。
そもそも論と人狼Jの基本仕様
全ての戦術は配役と戦況ありき
「人柱は駄目」「霊伏せなどありえない」といったフレーズを鵜呑みにせず、どんな配役・戦況だったら良いのか・駄目なのかを考えることが最重要ーーーこれがこの記事で最もお伝えしたいことである。
「人柱もありって聞いたんで人柱COします」
このような理由の紐付けは、メタ扱いされるリスクが伴う上に信用も得にくい。
人狼ゲームの根底として戦術の有効性はすべて状況に左右される。一概に○×をつけていくことは極めて困難…というより不可能に近い。この認識を持った上で以降を読み進めて欲しい。
人狼J基本配役は村人が少なく、人狼有利
GENが調べた限りでは、このアプリの初心者向け基本配役は狼2・狂人1・占い1・霊媒1・狩人1・村人3(初日犠牲なし)の9人村。
最もポピュラーな配役のひとつに12Aがあるが、これは先ほどの配役に村が2人増えたもの。この時点で村が不利であることは御分かりいただけるかと思う。
連続ガードの有無、票先の開示制、初日占いの有無など細かいルールは部屋ごとに設定できるようだが、 この配役で集めるなら最低でも連続ガードあり、票先は開示制、初日占いありにしておくことを強くおススメする。こうでもしないと人間陣営が勝つことが極めて難しいパワーバランスだ。
村長(村・部屋を作る人)になった場合は、初心者の方は以下の記事を参考にバランスの良い配役・ルールを検討してみて欲しい。パワーバランスの悪さが生む弊害や調整方法含め解説している。
霊伏せ・人柱は作戦としてありなのか?
ここまで以下2点について述べた。
・人狼Jはデフォルトで人狼有利な配役である
これらを踏まえて冒頭紹介した2つの戦術の詳細を見ていこう。
霊伏せ(役職潜伏)はグレーの人数が多いほど有利
霊伏せは人数に余裕があることが前提の戦術である。
霊伏せのメリットは早い話が霊媒が消えにくくなることーーーしかし消えない為には多くの人間が隠れ蓑として必要になる。
霊伏せを選んだ場合、霊媒師は村人・人狼・狩人・(狂人)で構成されたCOしていない群ーーーすなわちグレーの中に紛れることになる。
前述したように人狼J基本配役は村人が少ない。村人が少ないということはグレーの人数が少ない。グレーの人数が少ないということは、処刑or襲撃により潜伏霊が消える可能性が高いこと(霊潜伏死リスク)を意味する。
霊潜伏死は翌日以降人外が動きやすい戦況を作る。具体的には霊媒師の乗っ取りだ。狂人にせよ人狼にせよ霊媒師が1人しかCOしなかったことを理由に最終日まで生存されては、村は完全に人外に支配されてしまい絶望的だ。
霊伏せのもうひとつのデメリットに真占が霊媒師を占ってしまう無駄占いリスクがある。占い師の仕事はグレーを狭めることのはずなのに、グレーから占った人がグレーでなくなってしまっては1手無駄というわけだ。これもグレーの人数が多ければそれだけ下がっていくリスクである。
霊媒の潜伏死亡率を計算してみる
ここで霊潜伏死リスクを単純に計算してみよう。人狼J基本配役である9人村で考える。
初日役職全伏せ(誰もCOしない)で進行したとしよう。投票対象は9人、そのうち霊媒師が1人なので霊媒師が処刑される可能性は1/9(約11%)。
昼に人間が処刑されたとしよう。夜の襲撃は人狼以外から行われる。すると襲撃対象は
よって霊媒師が襲撃される可能性は1/7(約14%)となる。
これだけでも結構な潜伏死リスクがあることがおわかりいただけるだろうか。
人柱での役職吊り回避は有効か?
初日の柱進行という発想は、霊媒師(&狩人)を処刑したくないという心理からと思われる。しかし人柱を処刑したところで前述の昼処刑11%リスクはケアできるが、夜襲撃による14%のリスクは残っている。
初日昼に柱が2人出て、そこが両方とも素村だった場合は、片方の柱を処刑するしかない。夜、狼目線霊媒候補はさらに減り霊媒襲撃リスクは1/6(約16%)とさらに上がる。
通常配役では村が人狼を倒すチャンスは4回で、狼陣営は3匹紛れている。つまり4吊り3人外だ。
2回連続で人間を処刑してしまうと、高確率でPPが発生し村が負けてしまう。貴重な人狼を倒すチャンスを1回消費してまで行うべき戦術かといわれると甚だ疑問だ。
なお、人柱そのものは有効な場面も一定数ある。配役によっては役職吊り回避以外の目的で行われたり、狼が柱に出ることもある。繰り返しになるが、全ては状況による。
おまけ 人狼Jの頻出意見についてコメントしてみた
霊媒を伏せないと狩人が護り切れなくなるのでは?
それは初日に限った話でありません。その論理なら初日は占いCOを単独1名しか認めない戦術も検討すべきでしょう。
経験者村の12Aや16Aといった普通配役では、初日に占い結果で黒が出た場合、黒にCO有無だけ尋ね、COがない場合はその黒を処刑し、1-0状態のまま他のグレーは完全黙秘する展開もあります。これは狩人の護衛を黒出しの占い師1点に固定させる為です。
役欠けとの兼ね合いや連続ガードの有無などで総合判断することにはなりますが、いずれにせよ役職潜伏は難易度が高いという認識を持っていただければと思います。
グレーの幅が広ければ相対的に役職潜伏死リスクは下がる為、村の規模が大きくなる(≒グレー幅が広くなる)ほどこのテの作戦は使われる傾向が強くなります。
霊媒結果で効力を発揮してから(黒結果を持ってきてから)出るべきでは?
初日の占&霊CO以外は認めないーーーいわゆるFO(フルオープン)することを民意で決めると、霊媒が1COだったときは霊媒師が本物として確定させることができます。本物と確定できれば、そこは処刑する必要がなくなり司会・進行を任せることができます。霊媒の能力こそ発揮していませんが、村には十分貢献できるのではないでしょうか。
霊媒師は2人以上COがあった際はローラーされることが主な仕事となり、正確な霊媒結果を村が得られなかったとしても様々なメリットが村に与えられます。霊媒2CO以上の時の有効な立ち回りについては以下の記事も参照してみてください。
また、戦況によっては2COでもライン戦という戦い方も検討してみましょう。
霊媒師や占い師は仕事を終えると安全策で処刑対象になります。2狼しかいない村で黒結果を持ってくるまで潜伏することは、仕事を終えてから出てくることと同義です。無事COできても村としては扱いに困ってしまうでしょう。
市民・素村になると面白くないんだが
市民は狼に面倒臭がられて、役職よりも先に襲撃されることが目標のひとつです。
柱になって有限な攻撃回数を1消費してしまっては市民としての面白さは勿論のこと、人間勝利も遠のいてしまうことが多いでしょう。柱ではなく、グレーの中の人外候補探しと、役職の誰が本物かの精査に尽力してみてはいかがでしょうか。
積極的に本物の役職が誰かを考えたり、狼を探そうとする姿勢を見せれば狼陣営にとって最も嫌な村人になることができます。考察が間違っていても積極的な姿勢自体は一定の評価を得られる為、王道の村人アピールになります。
特殊能力のない市民だからこそ、プレイスキルのみで人狼に脅威と思わせようではありませんか。それこそがイケメン市民とGENは思います。
また、面白くない・つまらないことを理由に時としてトリッキーな戦術に手を出したくなる(もしく既に出した)こともあるかと思います。しかしそれらの多くは村にタミフルのような効果をもたらします。用法・容量を守って楽しい素村ライフをお過ごしください。
暴言・煽りが多くて嫌or注意されて嫌
人狼ゲームは「議論する」「人数が多い」「特殊な環境である」などなど、口が悪くなったり表現がきつくなる要素の多いゲームです。気になる人はGMや村長となって事前にルールを定め、それに従わない場合は通報・強制退出の措置をとると良いでしょう。
また、チャット人狼は熟練者であればあるほど短く簡潔な表現が好まれる為敬語・敬称が省略される傾向が強くなります。これに不快な思いを強く持つ方は別の形式の人狼(対面人狼など)にチャレンジすることをお勧めします。
GENは暴言は一種のラフプレーと考えています。完全否定をするつもりはありませんが、審判(GMや村長)にファールと判定されたら控えるべきでしょう。
物事が上手くいかないことを楽しむ---ある種の「図太さ」って大事です。良い意味でゆとりを持ってプレイしたいものです(自戒